日本のドローン第一人者、野波教授が語るドローンの未来 (前編)

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世界的に次の成長産業として注目を集めているドローン。この分野で日本人研究者の第一人者と言われているのが千葉大学特別教授の野波建蔵教授です。

野波教授は千葉大学発ベンチャーの株式会社自律制御システム研究所の代表取締役社長も務めており、同社は国内でドローンの大規模な製造・販売体制を構築しています。

今回は野波教授に「ドローンの未来・テクノロジー」についてインタビューを行いました。

 

野波教授

千葉大学 大学院工学研究科・工学部 特別教授

株式会社自律制御システム研究所 代表取締役社長

ミニサーベイヤーコンソーシアム 会長

 

■株式会社自律制御システム研究所のドローンについて

 

商業用ドローンを開発

野波さんの会社は南相馬市でドローンの開発・販売を行っています。商業利用ができるドローンを開発していらっしゃるということですが、具体的にはどういった形でドローンを使ってもらいたいと考えていらっしゃいますか?

「用途は色々ありますが、放射線計測、インフラ点検の運用、日本は自然災害が多いですから警察や消防などにも使ってもらうと。その他、エンターテイメントもありますけど、主に産業用ということですので、そういったところで使ってもらえればと考えています。」

海外のドローンですと、10万〜20万円の安価なものが中心です。国内製のドローンだとどうしても価格帯が上がってしまうと思うのですが、海外のドローンと野波さんの会社のドローンの一番の差別化ポイントはどういったところでしょうか?

「ホビーライクな海外の製品とは全然性能が違います。使っている部品が違います。高い理由の一つはそれです。例えば、オートパイロットのところの部品も全然違います。信頼性が高いですし、我々も耐久試験をしていますが、海外のドローンでは100時間程度しか持ちませんが、我々のドローンは500〜1000時間は持ちます。それくらいはっきりと差が出ます。その辺をしっかりとご理解いただけるかは難しいところだと思いますが。見えないところなので。」

ということは、長期間使うことを前提にすると、海外のドローンと比較しても十分にペイする価格帯ということですね。

「はい、その通りです。いずれは完全に日本製で置き換えます。まだ完全には出来ていないのですが、価格的には今の価格に近い価格で、ただしすべて日本製というところにしたいです。やはり品質が全然違いますから。それが我々が目指しているところです。それからもっと言うと、我々のオートパイロットはモデルベースという方法でやっています。それは、この機体の物理モデルをきちんと数式に表して実装を行っています。一方で海外のドローンは試行錯誤でやっています。何が違うかというと、いまAmazonは宅配をするというと重さがかなり変わりますが、そういうときにも我々のドローンはびくともしないで安定に飛べます。例えば、モーターの1個が壊れたときにも残り5個できちんと飛べます。そういうかなりハイテクな技術を実装していますね。」

海外のドローンではモーターの部分が壊れてしまって墜落してしまうことが多いとお聞きしているのですが、飛行中に万が一、プロペラのモーターが壊れてしまっても姿勢制御しながら着陸できるということですか?

「そういう機能を我々のドローンは持っています。」

 

ドローンシミュレーター

ミニサーベイヤーコンソーシアムの中で、ドローンのシミュレーターを作っているとお聞きしました。

「我々が作っているドローンのモーターとかの物理的な特性をすべてシミュレーターに入れてかなりリアルなものを開発しています。それが一つ差別化ポイントとなっています。アプリなどのフライトシミュレーターはゲーム的なものなのですが、我々のシミュレーターはきちんとした物理的な特性を考慮しているので全く違います。」

そのシミュレーターには、ドローン本体の物理的な特性だけでなく、風速などの外的要因も変数として考慮されていますか?

「そうです。そのため、異常な事態が起こった場合の予測もできます。」

 

ドローン保険

ドローン用の保険も用意しているとお聞きしています。どういった事故のリスクを考慮した保険内容なのでしょうか?

「対人、対物、機体保険という3つの保険が用意されています。車並みの保険内容です。対人、対物は5億円まで補償できますが、掛け金によります。機体保険は、事故が起きたときの状況にもよりますが、どこまで過失責任があるか。突風が吹いて不可抗力で墜落してしまった場合には新品と交換できますし、十分な保険内容となっています。ドローン自体はまだまだ技術的な進化の途中のため、完全なものではないというご理解のもとで保険に入ってもらう必要があります。」

 

ハードウェア・ソフトウェアのカスタマイズ

今後、野波さんのドローンを利用してビジネスを展開する会社が数多く現れてくると思います。しかし、用途に応じてある程度はカスタマイズが必要になるのではと考えています。実際に、ハードウェアやソフトウェアの部分はどれくらいカスタマイズが可能ですか?

「カスタマイズはインターフェースの部分は可能です。しかし、オートパイロットは日本製ということで、オープンソースみたいに完全なオープンにはできません。ハードルが高いことが多いので。それ以外のところはオープンにして、カスタマイズしてもらうという考え方です。たとえば、カメラ以外のあるものを搭載して、チューニングなども可能です。」

SDKのような形で外部のエンジニアがソフトウェアを開発しやすいようにすることは検討していますか?

「検討はしていますが、実際にはやっていません。しかしそういったことも今後は必要だと考えています。」

 

量産化について

今後は量産体制を作り価格帯を下げていくという形になりますか?

「考えています。目標は100万円です。」

何年後を目処に100万円程度にしたいとお考えですか?

「数がどれくらいはけるかによりますが、3年後くらいには100万円にしたいと考えています。そのためには、年に5000機くらいは売りたいです。また、オートパイロットもそれくらいの数を提供できれば100万円になるのではと考えています。もちろん、海外も含めてです。」

 

drone

 

■ドローンの将来性

 

テクノロジーの課題

国外ではドローン関連のビジネスが増えています。現在、ビジネスをする上でドローンのテクノロジー関連の課題は何でしょうか?

「飛行時間、信頼性、障害物を発見して回避する技術、これらの技術は求められています。地上からだいたい150メートルの間というと、障害物だらけなので。」

海外では自動で障害物を避けるような技術が研究開発されていますね。それが実用化されることが重要ということですか?

「それを実装して、しかも一定のスピードで実現することが大切です。ゆっくりなら回避ができるのですが、スピードが上がって時速50キロでそれが実現できるのかというのが課題です。」

自律飛行しながら物体を避ける技術はまだ実用化が難しいと思うのですが、どれくらい経つと一般のドローンに搭載されるようになりますか?

「少しずつゆっくりと技術は進化しますので、いつ頃に出来るとか出来ないとか、はっきりは言えないのですが、ネックとしてはコンピューターの速度が遅いというところです。」

コンピューターの処理速度が遅いということで、解析が十分できないということですか?

「はい。画像処理が間に合わないということが問題です。オフラインなら問題ないですが、オンラインでリアルタイムで外観を認識するというのはまだ難しいです。あと10年くらいはかかるでしょうね。」

ロボット全般で外観認識がネックになっていますね。

「ロボットビジョンというのは永遠の課題です。最終的には鳥のようにならなくてはいけません。」

 

バッテリー問題

有線ドローンを開発して、バッテリーを常に充電する形で充電問題を解決しようとする試みがあったり、バッテリー瞬時自動交換装置も開発していらっしゃいますね。

「バッテリーが切れそうになったら、いったんバッテリー交換ステーションに戻ってきて自動交換するような装置で、10秒くらいで交換できます。充電ではなく交換なのでロスタイムが最短になります。」

海外ではアメリカのSkycatchというスタートアップがグラウンドステーションというものを作ってまして、ドローンが自律飛行から戻ってきて、バッテリーを交換してまた飛んで行くという仕組みが作られています。ステーションの中では別のバッテリーが常に充電されていて、それを入れ替えるという形になっています。グラウンドステーションの中では回転木馬のような形で常にバッテリーが充電されていて、ドローンが帰ってきたらバッテリーを交換する仕組みを取り入れていますね。

参考:米ドローンスタートアップ「Skycatch社」の無人飛行システムの秘密

 

しかし、根本的な解決法として、 バッテリーの持ちを長くするというのが一番良いと思うのですが、そのへんの技術革新というのはなかなか難しいものなのでしょうか?

「結局、有線だと束縛されているので自由に飛べない。バッテリーだと飛行時間が短いというジレンマで、ワイアレス給電というのが一番良いと考えています。マイクロウェーブで電波で電池を供給する。しかし、これもなかなか難しい技術で。まだまだ実用には耐えられません。」

ドローンのように場所がかなり離れてしまうとワイアレス給電は難しいかもしれませんね。電池のイノベーションというのは今後まだ時間がかかりそうでしょうか?

「いや、ものすごく進むと思っています。実際カナダはそれをやっていて、一時間の飛行ができます。マイナス40℃という環境で普通に飛行ができる。驚異的なバッテリーの開発も出来ています。お金をかければできるということです。」

 

ハードウェア・ソフトウェアの進化

ドローンはハードウェア・ソフトウェアともにまだ発展途上だと思うのですが、今後、ドローンのハードウェアはどのような発展がなされていくとお考えでしょうか?

「飛行時間が短いため、発電機を持つということも考えられますし、モーターもアウターローターではなく、インナーローターになるとか。今は完全なヘリの姿ですが、飛行速度を上げるために、固定翼と回転翼のハイブリッド型なども考えられます。飛行速度が早くしたいときは固定翼となり、垂直離着陸は回転翼ということですね。そういう機能に合わせて、変形できる機体というのはこれから出てくると思います。」

固定翼と回転翼については、アメリカのKickstarterというクラウドファンディングサイトで資金調達したSkyProwlerが両方を併せ持つドローンとして注目されていました。垂直離着陸時点では回転翼で、ある程度速度が増すと固定翼に切り替えて回転翼は内部に収容するようなドローンです。今後はこのようなドローンが一般的になるのかもしれませんね。

参考:まるでSFの世界!?トランスフォームするドローンが話題!

 

ドローンに搭載されるロボットアーム

今後、ドローンの空中作業のためにロボットアームが搭載されるとお考えでしょうか?

「簡単な作業や危険な作業などに活用されると思います。モノを運ぶときにグリッパー的なものを使っているのですが、もっと上手く活用して、ちょうど鳥の足のようにモノを運んでますが、モノを食べるときに器用に足を使ってますよね。あんなように足であり、ハンドグリッパー、ハンドマニピュレーターとなると。そういうものが今後間違いなく出てくると思いますね。」

ロボットアームを利用してどのような活動が可能でしょうか?

「ものを運ぶというのも一つの仕事ですが、例えば一つあるのは消火活動ですね。消火活動も色々あって、消火弾を投げるというのもありますし、ドローンがホースの先を持ってピンポイントで燃えているところを消火していくというのもあります。赤外線カメラで画像処理して当たっているかどうかをきちんと見ながら消火活動するというのはあると思います。あとは高層ビルの外壁を洗ったり、窓を拭いたりというのはありますね。」

 

続き:日本のドローン第一人者、野波教授が語るドローンの未来(後編)

 

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