慶応義塾大学「ドローン社会共創コンソーシアム」事務局長の南政樹氏に聞く、コンソーシアムの今と未来

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ドローンがパソコンや自動車などのように普及する「ドローン社会」の到来を見据え、慶應義塾大学SFC研究所では領域横断型の「ドローン社会共創コンソーシアム」を設立しました。

今回は同コンソーシアムの事務局長を務める南政樹氏にご協力をいただき、ドローン社会共創コンソーシアムの概要や今後の取り組みなどについて、株式会社CLUE CEOの阿部亮介がインタビューを行いました。

 

慶応義塾大学 南さま

 

阿部:ドローン社会共創コンソーシアムの概要についてお聞かせください。

ドローンは25年前のインターネットみたいなところがあると思っています。僕はインターネット技術の研究者なのですが、インターネットが社会に普及しはじめたときには、ユーザーの行動を管理ができないとか犯罪に使われるんじゃないかとか色んなことを言われてきました。一つ一つの課題に取り組んできて、今のような豊かなコミュニケーションを基盤とするインターネット前提社会になりました。ドローンにもわれわれのモビリティを変化させる基盤となる可能性を感じています。すでに地上のモビリティは飽和状態です。特に都心部はそういう状態ですが、その解決策として空のモビリティにポテンシャルがあると思っています。ドローンは、テクノロジーとしてはスマートフォンとほとんど変わらなくて、インターネットからこれまで続いてきている様々なデジタルテクノロジーの知見が全て活用できます。幅広い可能性を持つ「空間の移動」と、これまでの財産を組み合わせることによって新しい社会が作れるんじゃないかというのがそもそもこのコンソーシアムの出発点です。

SFCは特定の学問領域に特化するのではなく、横並びで工学から芸術までごちゃまぜに学ぶことができる守備範囲が広いキャンパスです。コンソーシアムの立ち上げに際してSFCとしてやらなければならないことが3つあると思っています。それは、教育、研究、社会展開です。

一つ目の教育は、ドローンを適切に運用できるようになることもそうですが、ドローンを応用した課題解決でその適用方法を間違えないように「ドローンとは」という哲学が必要です。インターネットも同じことをしてきていて、90年にSFCができたときに、世の中の人がだれもインターネットというものを知りませんでした。しかし、SFCではインターネットを日常的に学生たちが生活の中で活用し、メールで海外の人とやりとりするということもしていました。そうすると、海外では、日本の学生なんだけど、英語もできるし、鋭い変な質問をしてくる学校があるとSFCが話題になったこともありました。そういうふうに、まだ始まってないけれどこれから始まりそうな領域のものをなるべく早く若い世代に触らせてあげて、その中で自分たちの体験として「ドローンとは」を考え、学び取り、その存在をあらゆる角度から見つめ返してみる。たとえば、ルールを作るとしたらどういうルールなら良いのかを考える機会を与える。実際にこれからステークホルダーになる人たちがそういったことを考えることが大切だとSFCは考えています。

SFCは世の中のムーブメントを早く捉える学校で、25年間そういう取り組みをずっとやってきています。そういった中でドローンはどうなるんだろうと考えたときに、ドローンをしっかりと扱える人を育てないといけないよねということで、ドローンを実際に触って飛ばして、失敗も経験しながら、色んなことを肌で感じながら、じゃあどうしたら良いんだろうということを考える。実践有りきだし、失敗することもある程度考慮しながらドローンをきちんと扱える人を育てることがSFCの役割だと思っています。

もう一つは研究です。研究というとドローンそのものを作るという技術研究があるのですが、SFCにはドローンそのものを研究してきた人はいません。しかし、自動車の自動運転だとかロボットの協調動作を研究している人など、制御技術をやっている研究室があります。一方で、ドローンを活用した研究活動は既に行われています。たとえば、環境に関するデータを測定するとか、建築の3Dモデルを作るといったことは日常的にやっており、それぞれの活動にはドローンに関するニーズとシーズが色々あります。ただ、これまではそれぞれの研究室がなんとなくドローンを使って、バラバラに動いている状態でした。そこで、ドローンで一括りにして、色んな人がそこに集まってくるようなフォーメーションを作ってあげることによって、研究としても方向性が導き出しやすい、成果もまとめやすい、といった形を作ろうと考えました。このように、ドローンに関わる研究者の結集するという意味で今回設立されたコンソーシアムには意義があると思います。

最後は社会展開です。現在、ドローンは残念ながらあまりイメージが良くありません。というところは、20数年前のインターネットととても良く似た状態です。犯罪に使われるとどうするんだとか、そもそも軍事技術でしょといったイメージがありますが、これもインターネットと良く似ています。ドローンは研究としては「離れたところで遠隔で空間を自由に動けるロボット」と位置づけられますが、それが軍事的な目的で使われています。ところが、軍事的な目的で使われているものが全て軍事技術の研究から生まれたかというと、ちょっと違うことがあります。これは、新たなテクノロジーの研究にDARPA(アメリカ国防高等研究計画局:Defense Advanced Research Projects Agency)というファンディングエージェンシーが、予算をたくさん配分してきた経緯があり、それ公になる段階で「国防」という部分が強調されたことによる誤解が多分に含まれていると感じています。そういう観点で、アメリカ発信の技術は軍事技術と言われがちなのですが、実際には「空間を自由に動けるというテクノロジー」ということであり、それがドローンの哲学であり、社会展開には色々な可能性があると思っています。そういう意味できちんと社会展開するためには、ドローンにどんな課題を解決の可能性があるか、それをどのように伝えていくべきか、法的な整備はどのようなものが必要か、そして、生活の身近な存在として具体的な便利な使い方にはどのようなものがあるのかといったことを徹底的に議論し、発信していくことが重要です。テクノロジーの進化を示していくために、自動車で言えばF1レースというのがありますが、ドローンに関しても今度ドバイやハワイでドローンレースが開催されますが、そういう活動はとても重要です。加えて、社会とドローンが密接な関係性を作ってドローン前提社会に進んでいくプロセスでは、既存の法律とかSFCが持っている色んな知見が上手く使えるんじゃないかと思っています。

以上のような教育、研究、社会展開という3つがコンソーシアムとしてやっていきたいことです。その中でSFCとしてそういうことをやりましょうよという話をさせていただいたところ、思いのほか、色々な先生から手があがってきまして、20人以上の教員が参加することになりました。コロプロの千葉さん、ORSOの坂本さん、元DJIの井上さんの3人も研究者として迎えることが決定して、コンソーシアムというのを立ち上げましょうと。具体的な活動としては、教育と研究はそもそも大学としてやっていることなので、教育プログラムとして組み入れていくとか、今までの研究成果をドローンという観点で統一することによって研究成果を出しやすいような形にする。また、社会展開ということでシンポジウムを開くとか、12月に学内で一回やったのですが体験会などもやっていきたいです。ドローンというとDJIさんのPhantomとかInspire 1みたいな大きい機体を想像しがちなのですが、Parrotさんのミニドローンのような簡単に操作できる小型のものもあります。撮れる映像もしっかりしています。コンソーシアムではドローンに詳しくない方も参加できるような「ドローンフェス」のようなイベントもやっていきたいと思ってまして、シンポジウム、レース、フェスを抱き合わせにしながらSFCを中心に開催できないかということを考えています。

研究としては、色んなことを考えております。その一つとして、ドローンは電波を使うので電波関連の技術と運用の研究を考えています。国内はいくつかの規制があるので、いまは携帯電話をドローンに乗せることができません。空に浮かんだ瞬間、陸上局じゃないので、免許が違うからということで。我々は、SIMを乗せたドローンには大きな可能性があると思ってます。携帯電話網のインフラ技術を地表150mの範囲で使えると、基地局間をローミングしてくれるわけですから、携帯電話のカバレッジがあれば、バッテリーの問題さえカバーできれば、広範囲に飛ばすことを制御できます。しかし、現状ではその可能性を検証することすらできない。人が操縦するのではなく自律的に飛行する場合、そこから得られるデータの利用価値は無限に広がるのにもったいない話です。先ほど少し出た電池(バッテリー)の技術ももちろん研究しないといけない部分ではあります。この前のCESでも水素電池が出てきたりしましたね。様々な技術が開発途上で可能性が広がることがわかっているわけで、だとすると一番最初に気をつけないといけないのは要素技術の実証的な検証や運用のところなんじゃないかと思っています。千葉さんも前から言っていることなのですが、SIMを乗せられるような状況を作って、その可能性を検証して、世の中にそれを示すことによって法的な根拠として法律を改正するところまで持っていくようなそういう動きをしていきたいと思っています。

そういうことを前提にしたときに、色んな可能性が開けてきます。我々は病院とのタイアップをしているのですが、そこが遠隔医療を考えています。その時、現在の一番の課題が薬を届けるという部分です。普通の物流を使っても良いのですが、例えば午後に診察されて今日の夜からこのお薬飲んでくださいねといったときコストがかかるソリューションしかありません。そこでドローンが利用できます。厚労省の集計によれば、世の中の薬局はコンビニよりも多いわけですから、たとえば、電子処方箋が医師から近くのかかりつけ薬局に届けられ、その指示によってドローンが飛んできて、患者の手元に薬を届けるということができます。届けるところに服薬管理の機能を持たせておくと、本当にその人がその薬を飲んだのかといったことも把握が出来ます。bitとatomという観点でいくと、bitはインターネットで運ぶことができるのですが、atomのモビリティはなかなかできてなかった部分で、インターネットとドローンを組み合わせることによってその2つが上手く使えるようになります。この例は薬だけでなくて、色々なところに応用が可能です。そういう可能性を世の中に示していくということも大学の役割だと思っています。世の中に提示した事例として、以前、SFCではナポリピザをInspire 1で運ぶという実験をやりました。

ドローンでモノを運ぶというと、通販事業者はラストワンマイルの課題に取り組んでいます。今の物流のモデルもインターネットのパケット転送の制御と変わらなくて、要は対極の大まかな方向に向けておいて、あとはよしなに細かいところに細分化していってくれる。その最後の部分がすごく大切なのですが、そこだけドローンで任せるといったことも出来ると思います。効率化とか使い勝手などを考えたときにドローンの可能性というのはもっともっと伸びてくると思います。

ノートパソコンって今は8時間くらい持ちますが、昔は2時間程度しか持ちませんでした。しかも消費電力は今のほうが遥かに多い。テクノロジーの進歩は何十年というスパンで見た時に、そういう形になってきます。大学は10年20年先を見据えてやるときに、電池はこれくらいいくだろうなとか、既存の通信網を使った何かもこれくらいいくだろうなとか言ったことを考えて、その上で応用を考えないといけません。研究としてやることはそれらの可能性を世の中に見せていくことも大切です。

 

阿部:私も長期的な技術ロードマップを常に考えていて、「これくらいのタイミングでこういうテクノロジーが出来るだろうから、そこから逆算して今はこういう事業を立ち上げよう」といった観点で事業に取り組んでいます。コンソーシアムでは外部に対して5年後10年後にはこのような技術が発達してくるといった発信をしていく予定はありますか?

やります。たぶんそれが僕らの大きなミッションだと思います。なので、コンソーシアムというのは御存知の通り、本来は敵同士かも知れない企業同士もコンソーシアムに入って協力することによって社会にビジョンを示したり、業界全体の何かを考えるといったそういう場を提供していると思っています。なので、10年後20年後のビジョンについては各社色々な考えがあると思うのですが、最大公約数的に考え、意見を集約した時にどこが共通項でどこが課題でどこにブレークスルーが必要なのかといったところを綿密に捉え、かつそれらを示していかないといけません。そういうことは、ドローンを支えていく業界の人達が自分事として捉えていただける場を作っていかないといけないと思います。どこかの会社が音頭を取るといった形だと競合他社が嫌がると思いますし、国がやるのも難しい。だとすればニュートラルな私立の大学がやることには意義があると思います。

また、ドローンの普及のためには哲学はとても重要です。ドローンってどんなものって言ったときに、僕らはインターネットをお手本にしたいと思っています。インターネットってなんだろうといったときに、インタネットのテクノロジーはエンドツーエンド原理(End-to-End Principle)と言って、両端のコンピューターが頑張る、中間のコンピューターはなるべくサボる、そういう役割分担の考え方になっています。電話の場合は真ん中が交換器といってすごく頑張っていて、両端はサボるということになっています。アーキテクチャーとしてどこにテクノロジーの重点を置くのかというのが重要で、スケールを考えた時に、単純に一億回線を構築しようとすると中央集中型だと中央の設備だけ充実させれば良いかというとそういうわけではなく、一億回線本当にできるかというと実は難しくて、地震が起きれば簡単にパンクするくらい脆弱です。ところがインターネットというのは両端を賢くしていて中は賢くなくてもいいというモデルで、エンドツーエンドが賢くインターネット全体のことを思いやりながら通信を制御することによって、効率の良い通信は難しいかもしれないけどパケットは必ず届くよねというそういう状態ができます。TCP(Transmission Control Protocol)という通信技術を見てみると、両端で最初にやりとりをして地道に通信をしながらパケットがしっかりと届いたことを確認して転送をしています。それって一見すると非常に効率が悪いですし、スケールさせたときにエンド側の数が増えるわけだから、そこを賢くするということはハードウェアの単価が高くないといけないわけです。それが普及するかというと、普通に考えればそんな高いのは買わないよねということで普及しないんですけれども、インターネットは今までの常識とは異なる哲学を維持しながら広がってきています。そういうところを大事にしたい。

それではドローンってなんだろうといったときに、ドローンはちょっとしたモノを運んだり、空撮する道具というふうに見えるのですが、一つの言い方としては人間の感覚器、目とか耳とか鼻とかを自由に移動させることができるものだという捉え方も出来ます。情報の転送は簡単にできるが、モノの転送は誰かに頼まなければいけなかったのが、ドローンを使えば全部自分でできるようになる。自分がオーナーとして物の転送を制御できると捉える考え方は大事な哲学だと思います。その哲学に反するか反しないかといったところからロードマップは作れると考えています。色々なアイディアがあると思いますが、ドローンが本質的に持っている哲学や存在の意義とそのアイディアを重ねたときに、哲学や存在意義に反していないかを判断していくことが大切です。そういうことを積み重ねていきながら、10年先20年先のことを見越していくということが重要です。

実はインターネットはそれをずっとやってきていて、それをやってきたのがSFCの村井純先生です。エバンジェリストとして世の中に説いて回って、様々な企業に「これからはネットワークの社会です」と説いてきました。ネットワークは色んなやり方がありますが、「インターネットが優れているのはエンドツーエンドのような誰でも自由に参加できるし、参加している人が責任を持って転送を制御できるということが重要なんですよ」ということを20年30年説いて回っています。

86年に研究が始まっているので、10年経ってWindows 95が登場し、徐々にインターネットの存在価値が認められてきて、2000年からインターネット・バブルが始まり、2010年にはスマホができるといった具合に繋がってきています。インターネットはそのような道筋をたどってきているので、それをお手本にして村井さんがやったことや世の中で起こったことの本質は何だったのかということを理解しながら、ドローンでそれをやったときにどこでぶれちゃいけないのか、どこは柔軟性を持っていいのか、そのあたりを捉えていきたいなと。そのことを前提にした研究計画を作っていく、そのことを一生懸命やっているところです。

 

阿部:ドローンの哲学をまとめるとどのようなところでしょうか?

ドローンは制御がこっち側にあるということ、モノを移動させることのオーナーシップを主張できるということ、この辺りはモビリティに関していうと今までとは違う特徴だと思います。そこを哲学として捉えていくことが必要です。それ以外についてはこれから活動しながら見定めていきたいと思います。

 

ドローン社会共創コンソーシアム

ドローン社会共創コンソーシアム記者会見の様子

 

阿部:コロプロの千葉さんやORSOの坂本さん、元DJIの井上さんを研究員として迎えるということでしたが、外部の企業とのコラボレーションなどはやっていく予定でしょうか?

はい、やっていきます。研究コンソーシアムというのは企業会員から会費を集めて、その会費を研究費として回しながら色々な活動を行っていきます。業界で一社ではできないが、複数社が協力してドローン業界を立ち上げていく活動をするのがドローンコンソーシアムの目的です。

企業会員はおおまかに2種類用意しておりまして、幹事会員と一般会員があります。幹事会員はコンソーシアムの中で研究活動を提案したり、ドローンコンソーシアムという枠組みを使ってイベントなどを開催できる権利を持つ会員です。一般会員は定期的な勉強会やシンポジウムに参加できたり、年に一回のイベントにも参加が出来る、ただ提案や実施はできないという形となります。コンソーシアムは社会全般のドローンのためになることをやっていくという活動なので、そこではレースやフェスなどの啓蒙活動もやりますし、研究費がたくさん集まれば人も雇えるので、海外のドローン研究者を招聘して、一緒にドローン技術を考えるとか、法律のスキームを考えるとかといったこともできると思います。それは、一社に対して利益を供与するというよりは、ドローン社会全体の利益を供与するという考え方なのですが、それとは別に共同研究という枠もありまして、ドローンコンソーシアムに参加された企業さんと、具体的なテーマを持ってエクスクルーシブに研究しましょうといったこともできます。それはコンソーシアムに入っていただければ、だれがどんな活動をしているのか、どういった成果が上がっているのかということがわかりますので、それを踏まえて別途相談ということになります。

 

阿部:コンソーシアムに参加する教授陣は慶應大学の先生が中心になるのですか?

いまはそうですね。将来的には外部の研究者も受け入れたいと思います。大学のコンソーシアムなので慶應義塾に何らかの籍を置いておかないといけないのですが、それは単純に研究署員登録をすればいいだけなので誰でも出来ます。また、先ほどインターネットをお手本にするというお話をしましたが、村井先生がインターネットを作り始めたときからずっとやっているWIDEプロジェクトという研究プロジェクトがありますが、それは産学連携のプロジェクトで、ほぼ全ての通信事業者が入ってます。それは大学の研究コンソーシアムなどの活動を束ねるところから始まっており、大学に事務局スタッフをおいてやっているのですが、幅が広がってきたので会員の枠を広げて、いろんな他の大学や企業が自由に入っていいですよという枠組みを作っています。そこまで持っていければ、大学のコンソーシアムとは違った活動もできるので、ドローンの状況がどうなるのかは今は見えませんが、ニーズを感じている人がたくさんいれば自ずとそういう方向になると思っています。いまは慶應の人たちだけなのですが、ご協力いただける方には慶應と関係を持っていただいてやっていただくことはできると思います。

 

阿部:活動は基本的にはSFCのキャンパス内だけでやっていく方針ですか?

拠点はまずはSFCのキャンパス内が中心です。それ以外に、可能な限りいくつかの拠点を作っていきたいと思っています。一つは2020年にオリンピック競技会場が数多く計画されている東京都の臨海地域です、その辺りはアジアヘッドクォーター特区でもあり、いわばショーアップ可能な地域です。また電信柱や高圧線などがないので、ドローンの色々な実験をするときに臨海地域は便利な場所だと捉えています。それ以外にも慶應義塾は色々な場所にキャンパスがありまして、たとえば、山形の鶴岡市に先端生命科学研究所というところがあります。そこではバイオテクノロジーだけでなく、バイオインフォマティクスというコンピューター上に生物をシミュレーションして遺伝子が操作されると何世代後にこうなるといったシミュレーションもしています。Spiberという会社ができたのもそこです。そこのキャンパス周辺でもドローンを活用した実験ができるのではないかと見ています。

拠点はSFCですが、研究のニーズに応じた地域を見つけながら具体的な研究を進めていきたいと思います。

 

阿部:色々な場所に研究拠点を作っていくということでしたが、将来的には海外展開などは検討していますか?

研究者を海外に派遣するといったことを考えています。ドローンの技術を広めるというフェーズになると、何かしらの世界的な標準を作る必要が出てきます。社会のインフラとしてドローンを使うフェーズでは、日本はたまたま島国なので海外までドローンを飛ばすということは難しいのですが陸続きの場合には国境を超えるということもありえるので、正式な取り決めなども作っていかなければなりません。世界中でドローンが普及したときには解決しなければいけない課題が山程あります。それは一つの国が主導権を握って解決するというよりは、ステークホルダー全員で解決していくべきだと思います。そういうことに関する働きかけを積極的にやっていきたいと思います。

日本という規制も厳しく、電波も無数に飛び交っているような場所で様々なニーズを見つけることにより、日本ならではの特徴を捉えた提言もできると思っています。

MITが無人で30マイルで飛ぶドローンを作りましたといったニュースもありましたが、いまは各国が自由にテクノロジーを発達させているフェーズで、根幹の技術を作っている時期です。それが実際に運用のフェーズになるとしっかりとした取り決めを作らないといけません。そのフェーズではグローバルに展開しないといけないですし、国際的な研究者の交流や産業界の交流などをコーディネートしていかないといけないです。これは誰かがやらないといけないところで、そのへんも何年か後の活動としては視野に入れています。

 

阿部:現在は技術や規制について世界的なデファクト・スタンダードが無い状況ですが、技術については大手ドローンメーカーが標準化を推し進めていくのではと見ています。その辺りについてはどのようにお考えでしょうか?

マーケットでイニシアチブを取っている企業の声が大きくなるというのは当然だと思います。ただ、それが排他的になるのはよくありません。一つの企業が全てをカバーできるのかというとそうではありませんし、用途に応じて向き不向きは出てきてしまいます。

ある部分を共通化しておくと開発コストがぐっと下がるとか、共通化することによって色々なものを取り替えながら機能を合わせていくといったこともできます。

自動車はもともとそうで、昔は各メーカーが自由に製品を作っていたのですが、プラグという部品が最初に共通化され、タイヤが共通化され、ナットもヨーロッパ方式とアメリカ方式で違うなどはありますが共通化が行われています。共通化することによってスケールメリットが働くのでコストが大きく下がります。そうすることで、消費者が買いやすくなるので、マーケットが広がります。何かを共通化することは良い方に働くことも多いので、その部分はどのメーカーさんも感じられておられると思います。

CCD(電荷結合素子:Charge Coupled Device)から出てくる映像の信号形式を統一させておけば、フライトコントローラーに入れるデータとして使えるようになるとか、それが二つあればステレオカメラとして使えて、制御のための信号として捉えることができるようになるかもしれません。

モーターについては、もともとの規格に則ったものが使われていますが、ドローン向けに細かい制御ができるように分解能を上げるとかそういったことが考えられます。そういうことをスタンダードにするといろいろな部品のバリエーションが出る中で製品を作るときに開発コストを下げられるといったメリットが出てきます。工業製品ってそういうところがあるので、スケールメリットを狙えるようなマーケットの取り方はあると思います。

インターネットの場合にはシスコという会社が昔からインターネット関連機器を作っておりまして、一時期、どこの通信事業者もラックの上から下まですべてシスコという時代もあったのですが、そうするとシスコにバグが一つあるとみんな影響を受けてしまいます。それに気がつく人たちがおりまして、ベンダーフリーという考え方ができました。ベンダーを複数組み合わせても動くようにすることで、一社の失敗がインフラ全体に影響を与えないようにする、そういう考え方があるのですが、それはドローンにも同じことが言えます。あるメーカーのフライトコントローラーのソフトウェアに重大にバグがあり、そこを突かれるとみんなある人にハッキングされてしまうみたいなことも考えられます。色々な機器がお互いに使える状況にあることを担保することが、技術の発展や技術を使った社会の発展に繋がってくるんだろうなと思っています。そこもマイルストーンとしては考えていきたいところです。

 

阿部:ドローンのデファクト・スタンダードを整備していく一つのプロジェクトとしては3D RoboticsDronecodeなどの取り組みもあるかと思いますが、それについてはどのようにお考えでしょうか?

Dronecodeもそうですし、オープンハードウェアといった考え方もあります。ハードウェアの基板のデザインをパブリック・ドメインにし、それを参照しながらよりパフォーマンスを高めたりカスタマイズをするといったことができるので、そのような下敷きができると亜流がたくさん生まれます。そういう亜流があっても良いのかなと思います。

 

阿部:コンソーシアムの中では、各産業に対して個別に技術を模索するというよりも、より基幹技術に近いレイヤーを中心に取り組んでいく予定でしょうか?

両方ですね。例えば観光と防災などは技術的な要件が異なってきますし、医療であればAEDを搭載したドローンなども出てきていますがAEDを飛ばすからこその必要な機能とか能力とかがあります。それぞれの領域を見据えながら、全体として考えたときにどこが共通部分でどこがカスタマイズ部分なのかを明らかにすることが大事なことだと思います。それが先ほど話していたハードウェアの雛形の部分で、雛形ができてくると、医療にはこういった機能が必要なのでセンサーを1個加えましょうとか、測量系だとレーザーを使った制御で1/10000の分解能でやりましょうとかが出てくると思います。共通項をくくりだしておきながら、特殊項はそれぞれの分野で考えていく。その辺りが一つの技術的なプラットフォームであり、それぞれの個別対応する具体的なサービスが存在する、そういったイメージを僕達は持っています。

 

阿部:コンソーシアムでは直近にはどのような取り組みを行う予定でしょうか?

3月19日にドローンフェスをやろうと思っています。これは授業の一環なんです。特別研究プロジェクトというもので、3月16日から春休み集中講義を開講するのですが、そこでは操縦法などを学生に教えながら、「ドローンの色々なネガティブな部分をポジティブにするためにはあなただったらドローンのどういう可能性をフェスでプレゼンテーションしますか」ということを授業の一環としてやります。その最終日、3月19日にこのフェスを実行することになってまして、フェスの運用も授業の一環としてやります。ドローンフェスの前の週にドバイのレースがあるので、参加者に日本人がいればデモフライトしてもったりとか、ドローン体験会とか子供向けのドローンの遊びなどもやりたいと思っています。きちんと使えば役に立つということをフェスを通じて啓蒙したいと思っています。

 

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株式会社CLUE提供



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